「医療コーディネーターへの応援メッセージ」アーカイブ

sakurai.jpg

『患者が自分らしく生きるために』

NPO法人HOPE★プロジェクト 理事長
http://kibou.jp 
桜井 なおみ (サバイバー4年生)

病による「挫折」や「社会からの隔絶」は、大きな社会的・経済的損失であると同時に、人間としての尊厳性の損失につながります。患者自身が社会の一構成員としての帰属意識を回復・確保し、自分らしさを失わず、人生を生きるためには、医療に患者自らが関わりをもち、非医療者として<自立>していくことが大切になります。

そのためには、患者を支える、あるいは患者同士が支えあう仕組みや場に、医療者も積極的に参画をしていくことが重要です。多くの患者の声を蓄積し、臨床現場に還元することで、患者のQOLや医療の質の向上を実現することができます。

がん対策基本法の制定から1年が経ちました。がん拠点病院の中には、「がん体験」を患者相談室などで活用し、医療サービスの向上に役立てようと前向きに取り組んでいる施設も少なくありません。

しかし、私は、「治療」を目的とする医療の現場へ、患者が「体験者」という「資格」だけをもって参画することに、限界と危険があると考えています。がん体験者がその貴重な人生体験を活かすためには、患者の果たす役割が病院組織の中で明確になっていること、あるいは医療機関の患者支援チームの一員として機能していることが必要です。そのためにも、両者の間をつなぐ「医療コーディネイター」の存在は欠かせません。

また、働き世代の3割はがん罹患後に失職や転職をしています。私は、医療コーディネイターのみなさんに、退院後も、病とともに歩む人々が自分らしく生きるための「社会」との橋渡し役となることにも大きな期待を寄せています。
ともに手を取り合い、病に対する社会の意識を変えていきましょう!

徳山 磨貴さん
兵庫県立西宮病院医療相談室 メディカルソーシャルワーカー

医療コーディネーターのお仕事は、病院で働いている私自身も、正直よく知りませんでした。岩本ゆりさんに出会い、その活動内容などを聞かせていただく中で、初めて具体的なイメージがつかめました。

私自身は、医療ソーシャルワーカーとして、病院のスタッフでありながらも、「医療」を専門とするのではなく、「社会福祉」を専門とする立場、すなわち患者さん・家族の「心とくらし」を中心にとらえ、支援させていただくことを仕事としています。その中で、患者さんやご家族の病院の方針や医療スタッフの対応に対する本音や、とまどいを耳にする機会が多いのです。

患者さん、ご家族の多くは医療スタッフに対する気遣いや医師に対する遠慮から、その人らしい医療をうけるチャンスを逃してしまっていることが多く、非常に残念に感じます。そのようなとき、医療コーディネーターが、患者や家族のもともと持っておられる力を引き出し、さらに専門的知識をもって、患者さん・ご家族の問題を共に整理・解決されるお手伝いをして下されば、より患者さんはその人のライフスタイルにあった、その人らしい医療を選択することができると思います。

将来的には、病院の相談窓口になる、医療ソーシャルワーカーと医療コーディネーターの連携がもてるようになればと思います。全国で、このような取り組みが広がっていき、今後一層ご活躍の場が増えますことを心から願っています。

佐藤(佐久間)りかさん
DIPEx-Japan事務局

長い間、婦人科疾患の自助グループで電話やメールによる相談を受けてきました。その中で感じるのは、治療法の選択肢が増えているにもかかわらず、患者には自己決定するのに十分な情報が与えられてないということです。特に慢性疾患では、選択の幅は経過観察から臓器の摘出に至るまで極めて幅広く、いきなりその中から選べといわれても、患者は当惑してしまうことが少なくありません。

確かに最近は患者もインターネットを駆使して情報収集することができるようになってきました。けれども、ネットは情報の大海原ですから、誰もが上手に泳ぎ渡れるとは限りません。闘病生活は一種の遠泳のようなもので、ネットや書籍、口コミといった様々な情報の海で溺れてしまわないためには、伴走船が必要です。

患者会などでは、互いに互いを励まし支えあいながら泳いでいくわけですが、そうした支えを身近に見つけられないとき、あるいはあまりにも波が荒いとき、つまり情報が錯綜して判断がつけにくいときには、同じ水の中にいるわけではないけれど、声の届くところ、いざとなったら手も届くところにいる第三者にサポートしてもらうことが大事です。

そういう意味で医療コーディネイターは、伴走船のように患者を支援してくれる存在なのではないかと思います。溺れかけたときに浮き輪を投げ入れるだけでなく、上手にペース配分して、本人の力でできるだけ遠くまで泳いでいけるように、アドバイスしてもらえる。そんな支援を期待しています。

北澤京子さん
医学雑誌記者

私は仕事がら、医師をはじめとする医療従事者の方にお話をうかがう機会が多いのですが、医療従事者には当たり前のことでも、そうでない人にはちっとも当たり前ではないことが多々あることを痛感します。医学用語ひとつとっても、難解であったり、略語のため意味が分からなかったりすることがめずらしくありません。医師が患者に対して「MRI(エムアールアイ、検査の一種)やって」と言ったところ、患者が「丸裸になって」と聞き違えて服を脱ぎそうになった(!)という、笑い話のようなことも聞いたことがあります。

 インフォームド・コンセントの考え方が普及し、病気の進行度合いや治療について、患者が医療従事者から説明を受ける機会が増えてきました。しかし、患者がほんとうに説明された内容を理解し、納得できているかというと、必ずしもそうとばかりは言えないようです。つまり、情報・知識という点に限っても、医療従事者と患者の間には、少なからずギャップがあるのが現実です。

 医療従事者との間に立って、よりよい医療を受けられるよう手助けしてくれる人がほしい――そんな患者の願いから、医療コーディネーターという職種が生まれてきたと理解しています。専門分化が進む医療現場では、医療コーディネーターの必要性は、今後、ますます高くなるでしょう。難しい言葉をやさしく言い換えるだけではなく、患者の思いを受け止め、患者が納得して医療が受けられるよう、活躍していただきたいと思います。

林伸宇さん
医師  東京大学医学部附属病院 千葉大学医学部卒業


世界一の長寿を誇りながら先進国中で最も安いレベルの医療費を実現している日本の医療は世界の中でもかなり高い水準にあると言えるでしょう。しかし、現代の医療技術や医療資源、医療制度下で行える医療には限界が存在するのもまた事実です。このような制約の下、我々医療者が直面している現実と、「何の制約もない最高の医療」を求める患者さんの希望との間には大きなギャップがあり、この橋渡しをする人材がこれまで不足していました。

この大きなギャップは、時に患者さんと医療者との信頼関係によくない影響を与えることがあります。臨床の現場では、患者さんやその家族との関係が良好でないと、医学的に正しいことでも納得していただけないときがあります。このような状態は、「納得できない」という気持ちを患者さんが抱きつづける点でも、萎縮医療をも招きかねない点でも、患者さん、医療者の双方にとって大変不幸です。

このような現実を打開するためにも、医療コーディネーターという選択肢があるのは大変素晴らしいことです。無過失保証制度や裁判外紛争処理(ADR)といったシステム面での整備とともに、よりよい医療の実現に必要なことだと考えます。

患者さんが「納得」できる医療を受けるためにも、医療者がやりがいをもってベストの医療を提供していくためにも、医療コーディネーターが果たすべき役割は間違いなく大きなものです。経験に裏打ちされた現場感覚と適切な医療情報を持って、患者さんに真摯に寄り添っていく医療コーディネーターの皆様を心から応援いたします。

加藤 麻樹子さん
看護師。國學院大學文学部卒業。東京女子医科大学大学院
看護学研究科実践看護学がんCNSコース修了

自分が病気になったり家族が病気になったりすると、家族の生活は急激に変わります。一家の大黒柱のお父さんが病気になれば、まず経済的な不安や負担が一家を襲うことでしょう。お父さん自身も会社のことや家族のことを考え、入院しても落ち着かない日々を過ごすことだと思います。

家庭を支えるお母さんが病気になれば、「生活」自体が脅かされます。小さなお子さんを抱えていたり、受験生のお子さんがいらっしゃればなおのこと、食事の心配をしたり、家事全般の心配をしたりと心配事は尽きないことでしょう。病気になる人がおじいちゃん、おばあちゃん、お子さんだとしても、やはり色々な不安や問題が出てきます。

インターネットで病気のことを調べ、入院費や治療費について調べても、個人が調べるには限界もあるようです。また誰かに相談したくても、相談できる人がいないという人も多いと思います。このような時に楽患ナースさんのような会社や人に出会えることは心強いと思います。医療者に聞きにくいことも、親身になって考え行動をしてくれるでしょう。ぜひ皆さん一人で悩む前に、医療コーディネーターさんへ相談をしてみてください。きっといい方法が見つかると思います。

岡部大祐さん
青山学院大学大学院国際政治経済学研究科国際コミュニケーション専攻博士後期課程在学
がん体験者


人は病気になると、その「異常」を「元に戻す」ために医療者に「治療」を求めることが多いと思います。しかし、がんをはじめとする慢性的で治癒が困難である疾病に対して、これまでのような近代的医療観では十分な対応ができないことが分かってきました。つまり、「標準」から逸脱してしまったけれども、もはや「標準」に戻れない人々が「いかにして生き切るのか」を共に模索・創造していくという医療観が欲されているのではないでしょうか。

もちろんそのことは近代医学の価値を貶めるものではありません。むしろ、適材適所という柔軟な考え方が適切でしょう。そのためには、目の前にいる病者が求めているものが、生物医学的な考えに基づく支援なのか、あるいは心理・社会的な意味での支援なのかを、その場その場で見極めるといった専門性が大切だと考えます。同一の「医療」ということばが意味するものが双方で食い違っていては、どれほどコミュニケーションを重ねてもよい結果を得るのは難しいのではないでしょうか。

その意味で医療コーディネーターは、第三者として医療者と病者の間に入り、互いの医療観や病気観などの違いを適切に見分け、自らの持つ価値観をも常に相対化し、支援の形を決めていく高い専門性を持つ存在です。現在よく言われるような「医療者 対 病者」という構図を調整し、支援・協働していく存在として大きな社会的意義を持つことになると確信しています。

hirosawa.jpg

病気の子どもをもつ親の会(現 ひだまりの会) 副代表  廣澤直美さん

『医療コーディネーター研修に患者家族として かかわって思うこと。』

子どもの小児がん経験や親の会での話し合いを通して思うことのひとつに患者(子ども)と家族がお互いをおもいやるあまりに本心を言えない、きけない「これでいいのだろうか」とわからない不安のままに大切な時間をすごしてしまうことがあるということです。医療コーディネーターは患者家族の話をよくきいてくれることからはじまります。病気になった時からそれまでにないさまざまなことにとまどいますが、その時にこそどう自分をとりもどすことができるかが大切かと思います。しかしそのことはほんとうに楽なことではありません。医療コーディネターと出会い、患者に寄りそう誠実な対応により心の中を話すことができたり、専門性に基づいた情報を得て自分なりの選択や決定ができることは家族や共に治療に取り組む医療従事者との信頼を深め自分らしく人生を送ること、生きることにつながるのではないでしょうか。相談できる方がいない場合にはなおさらのことです。

楽患ナースが患者の視点をつねに基点として医療コーディネーターを社会に定着させていくことにより患者家族と医療従事者がもっと楽により深く理解できることにご尽力いただけることと確信しております。そして少しでもお役にたてるように率直な声をとどけることを続けたいと思っています。

fukushima.jpg
記念すべき、お1人目は胃がん体験者の福嶋佳寿子さんです。

<<< メッセージ <<<

がん治療の極意は「気持ちは楽観的に、選択は慎重に」です。進行性の胃がんで手術を受けた時、自分で探し出した情報には限界があり、専門家の友人、知人から受けた情報支援に大いに助けられました。精神的なサポートも病気の治癒には非常に大切です。心と体は密接につながっています。様々なサポートを受ける事で、胃がんを克服出来た私はとても幸運でしたが、誰しもがこの様な幸運に恵まれるとは限りません。命のかかった選択はやはり自分が信ずる道を選ばなければ悔いが残ります。医療コーディネーターは、あらゆる面で患者、その家族を支援し、患者が悔いなく決断するために力強く手助けしてくれる事でしょう。

医療コーディネーターに求められる資質は、世慣れていて柔らかい印象がある一方で、医者などとの粘り強い交渉力にも長け、患者の要望を聞き取る能力があること等です。患者の手助けになるために、知識の取得に切磋琢磨するだけでなく、ヒアリング能力の開発や、言葉遣い、話し方の訓練などを通して、より良き医療コーディネターに成長して、社会貢献して頂きたいと思います。