2007年11月アーカイブ

岡部大祐さん
青山学院大学大学院国際政治経済学研究科国際コミュニケーション専攻博士後期課程在学
がん体験者


人は病気になると、その「異常」を「元に戻す」ために医療者に「治療」を求めることが多いと思います。しかし、がんをはじめとする慢性的で治癒が困難である疾病に対して、これまでのような近代的医療観では十分な対応ができないことが分かってきました。つまり、「標準」から逸脱してしまったけれども、もはや「標準」に戻れない人々が「いかにして生き切るのか」を共に模索・創造していくという医療観が欲されているのではないでしょうか。

もちろんそのことは近代医学の価値を貶めるものではありません。むしろ、適材適所という柔軟な考え方が適切でしょう。そのためには、目の前にいる病者が求めているものが、生物医学的な考えに基づく支援なのか、あるいは心理・社会的な意味での支援なのかを、その場その場で見極めるといった専門性が大切だと考えます。同一の「医療」ということばが意味するものが双方で食い違っていては、どれほどコミュニケーションを重ねてもよい結果を得るのは難しいのではないでしょうか。

その意味で医療コーディネーターは、第三者として医療者と病者の間に入り、互いの医療観や病気観などの違いを適切に見分け、自らの持つ価値観をも常に相対化し、支援の形を決めていく高い専門性を持つ存在です。現在よく言われるような「医療者 対 病者」という構図を調整し、支援・協働していく存在として大きな社会的意義を持つことになると確信しています。

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病気の子どもをもつ親の会(現 ひだまりの会) 副代表  廣澤直美さん

『医療コーディネーター研修に患者家族として かかわって思うこと。』

子どもの小児がん経験や親の会での話し合いを通して思うことのひとつに患者(子ども)と家族がお互いをおもいやるあまりに本心を言えない、きけない「これでいいのだろうか」とわからない不安のままに大切な時間をすごしてしまうことがあるということです。医療コーディネーターは患者家族の話をよくきいてくれることからはじまります。病気になった時からそれまでにないさまざまなことにとまどいますが、その時にこそどう自分をとりもどすことができるかが大切かと思います。しかしそのことはほんとうに楽なことではありません。医療コーディネターと出会い、患者に寄りそう誠実な対応により心の中を話すことができたり、専門性に基づいた情報を得て自分なりの選択や決定ができることは家族や共に治療に取り組む医療従事者との信頼を深め自分らしく人生を送ること、生きることにつながるのではないでしょうか。相談できる方がいない場合にはなおさらのことです。

楽患ナースが患者の視点をつねに基点として医療コーディネーターを社会に定着させていくことにより患者家族と医療従事者がもっと楽により深く理解できることにご尽力いただけることと確信しております。そして少しでもお役にたてるように率直な声をとどけることを続けたいと思っています。