医療はサービス業であると考えると、大切なのは物や技術よりもむしろ人の心だと思っております。ここに働きかけるのは利用者の声です。どんなに医療者が医療や病院のありかたを考えても、利用者の声のないところではどうしても自己の都合にとらわれてしまいます。利用者の声=患者視点を知ることこそ真に医療改革を考えるときに必要とされるものであると考えています。
この事は頭で分かっていても実現は難しいものです。機能評価の為の一時的なサービスでは患者本位とはなり得ません。これには痛みを伴う改革が必要です。一度白衣を脱いで、患者そしてスタッフと向き合う必要があります。そこからが改革の始まりです。その繰り返しがやがて院内に文化として定着し、全てのスタッフが患者本位の医療を実践する病院となるのです。
それではアメリカのプレインツリーPlanetree導入病院の改革の様子を紹介します。いずれも改革を継続的に実施し利用者にとっても病院にとっても大きな効果を上げています。(岩本貴)
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ケース1:
アメリカ北東部の州都にある病院。周りには有名大学病院を含め病院が充分にあり患者数の低下が深刻であった。
病院内改革の柱:以下の7つを2004年~2005年の改革の柱としている
・コミュニケーション
・癒しの環境および救急
・食事と栄養
・組織改革
・新しいロゴとブランディング
・従業員定例ミーティング
・スタッフによる改善チーム
それぞれの具体的なプランを以下に示す
<コミュニケーション>
・院長参加のタウンミーティング
・経営層のミーティング
・院内新聞の発行
・診療科部長によるミーティング
・院長のスタッフ向け音声メッセージ
・経営層による現場視察
<癒しの環境および救急>
・待合室の改善
・BGM開始
・病室の改善
- ブラインドを薄手と厚地の2重カーテンにする
- インターネット提供、ケーブルテレビの導入
・利用者に分かり易い案内版および院内マップ
・玄関での無料車引渡しサービス(Valet Parking)
・患者用病院の利用手引き
<食事と栄養>
・患者家族や事情のある患者への特別食を提供する
・ジュース、コーヒーサーバーをナースステーションに設置する
・ボランティアによるスタッフ、患者への焼立てクッキー
・新しい院内カフェの設置
・選択性食事
・救急患者への配膳サービス
<組織改革>
・プレインツリーPlanetreeモデル導入を病院内および外部へ発信する
・プレインツリーPlanetreeモデルについて病院内およびタウンミーティングにて議論する
・理念を記したものをメインエントランスに掲げる
・病院案内を地域のホール、雑誌や新聞に発信する
<新しいロゴとブランディング>
・変化を特徴付け、差別化する
<従業員定例ミーティング>
・双方向のスタッフ間ミーティング
・組織の問題を共有する
<スタッフによる改善チーム>
・診療科を横串にチームを編成し、継続的な院内改善を実施
次のステップとして
<キーとなる施策>
・継続的なスタッフの立ち振舞い改善
・癒しの環境づくり
・患者とのコミュニケーション向上
・スタッフと経営層との対話促進、成功事例の賞賛、前向きな文化醸成
<継続して進歩している点>
・スタッフへのケアおよび評価と賞賛
ほめる事を増やす、コンシェルジェサービス、スタッフの健康促進活動
・家族の取り込み
ケアパートナーチームとして24時間の訪問配慮
・癒しの環境づくり
アートワーク、癒しの照明、スタッフ休憩所の改善、放射線待合室の改善、患者が利用するエリアでの騒音改善など
・ボランティアチーム拡大
癒しのアートワークづくりおよび食事介助ボランティアの拡大
・栄養
欲しいときに提供する食事、ボランティアが使用できるキッチン設置、栄養士チームの患者コミュニケーション向上研修
ケース2:
アメリカ北東部にある病院。いわゆる古い体質の病院。患者数の低下が深刻であった。
【病院を蝕んでいた課題】
・高齢の医師たち
・患者数、マーケットシェアの低下
・新人類研修医到来
・医療スタッフの確保の難しさ
・32%の研修医が当院を避けると回答
【組織の文化について】
経営層は新しい施設を作るより病院内の文化を変えることが難しいと考えていた
文化の変革は、スタッフ教育、正直であること、スタッフと頻繁にコミュニケーションすること、変革をサポートするシステムを作ることが必要である
そもそも『病院は変革アレルギーだ!』という人もいる。
【病院内文化の改革組織立上げ】
外部コンサルティングを利用し全病院内の現状を、経営層、医療スタッフ、事務、ボランティア、患者にヒアリングすることで明らかにした。結果分かった事は全ての人がパーソナライズドケア(Personalized
Care)が必要だと考え、そして患者・家族にもっと注視すべきである、いままでとは全く異なる扱いをすべきだと考えていることが分かった。
院内で合意した方針は次のとおり、
”当病院は患者の視点をもち、かつ利用者の権利・責任を尊重し、医療者でなく患者本位の医療を提供する”
合わせて上記方針に沿って”病院から患者へのお約束””看護方針””従業員指針”を纏めた。
【実施した病院内文化の改革プラン概要】
1990年~1992年
・プレインツリーモデルの導入
1993年
・新人研修プログラムのリニューアル
・きちんとスタッフ個人見るプログラム開始
- 月間・年間べストスタッフの表彰 ※アニュアルパーティでは院内アイドルの選出も!
2000年
・成功したプログラムをきちんと評価する。下記を達成した部門にボーナス。
- 患者満足度向上
- 収益向上
- プロセスの効率化および生産性向上
2000年~2003年
・スタッフの教育・研修。従業員調査を元に興味のある分野のプログラムを開発
- スーパーバイザースキル
- 患者コミュニケーション
- 問題が発生した際の対処
- 横柄な人への対処
- 予算の理解
- 提案スキル
- パソコンスキル
2001年~2004年
スタッフの院内文化の理解度を継続的に調査。期間中17%向上。
【全体を通して特に重要なもの】
・ケアする人へのケア
・スタッフと経営層のコミュニケーション
・患者満足および従業員満足
【病院内文化改革活動の結果として】
・患者満足度 83%から97%へ向上(1994年から2004年)
・外来患者 72%増加(1998年から2004年)
・マーケットシェア増加
・収益性向上
・生産性向上
・クレーム減少
・病院への寄付金増加
・社会奉仕活動の増加
2つのケースに共通していることは、”自院がどうあるべきか”を見つめなおし、それに向かって”経営層とスタッフそして患者が対話”し、一丸となって”プランを考え実行し”、努力したものを”きちんと評価をする”。そしてそれを”継続”している点です。また、組織を横断するような全社的活動、改善はともすると自己否定につながりますから内部の人間だけではなかなか進みません。上手く外部のコンサルティングを使っている点も同じです。
楽患ねっとは上記のような患者視点からの病院改革コンサルティング(プレインツリーモデルの導入を含めた)を提供しています。ご興味のある方はこちらへどうぞ。