患者本位の医療アメリカ最新事情 第1回 患者アドボカシー (岩本貴)

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02f26df1.gif今日多様化する医療において患者が満足いく医療を受けるためには当事者である患者の参加が不可欠であり、楽患ねっとはその仕組みを次のように考えています。

患者の不満・ニーズの受け皿の提供

患者のニーズからの医療システムづくり

患者の教育および医療への参加支援


?は広義の患者アドボカシー(病院の患者相談室や各種患者支援団体)であり、?は患者視点で考えられた各種サービス、そして?は自分の健康を守るため、そして皆が患者視点の医療を受けれるための活動になります。

上記の3つを、楽患ねっとの活動およびアメリカの医療現場を視察した(2005年10月9日から2週間)内容から3回に分けてレポートします。

【日本における患者相談室】

楽患ねっとでは病院の患者相談室を利用した方にアンケートを行っている。投稿して頂いた内容を見ると”問題を解決できるかどうかは別にして話を聞いてもらえる場がある”ことが一定の評価を得ているように思う。

一方、病院の相談室に勤務していたソーシャルワーカーの方からは次のようなコメントを頂いた。”医療システム上どうにもならない問題に対して、患者様側(ご家族様も含め)と病院側の間に立って調整する役割がソーシャルワーカーの仕事でもあり、私達の相談室に課せられた役割であったと思います。””患者さん家族の意向と病院側(病院職員)の意向の間に立つと必ずジレンマが生まれます。”これはどんなベテランワーカーにもある悩みであり、患者側に立って働いているMSWの燃え尽き症候群の理由になっている。

【アメリカにおける患者相談室】

アメリカでは患者の権利が1960年代から議論されていたという事もあり、患者相談室が医療システムのなかでしっかりと確立しているような印象を受けた。具体的な状況をニューヨーク・ベスイスラエル病院(患者中心の医療の実践で有名。837床)の患者代理部代表のLaura Weilさんへのインタビュー(2005/10 実施)の内容を交えて報告する。


○患者相談室の役割

大きく2種類ある。病院の患者相談室と独立系の患者相談室である。

病院の患者相談室(Patient Advocacy, Patient Representative)
・医師や看護師などの病院スタッフとのコミュニケーションのサポート。
・医療過誤の患者への報告。患者の知る権利として定義されている。
※なお、日本では一般的に医療安全管理部というところにリスクマネジャーがおり(医師やナース)医療安全について取りしきっているが、患者さんへ医療過誤を報告する方法は確立されていないと思われる。情報は院内での共有に留まっていて、患者への報告は都度トップ層が決めているのが現実。
・ルーティン(マニュアルに規定されている)以外の新しい患者ニーズに対するサービスの検討および提供。

独立系の患者相談室
・患者が医療を受けるための支援。
・医療政策への働きかけ。主に皆保険の実現。
※いずれも国民皆保険でないが故の業務といったところ。アメリカ医療の影の部分である。

上記のように患者の御用聞きだけでなく非常に多岐に渡る業務を担っている。

以下より病院の患者相談室を取り上げる


○メンバー構成

ニューヨークベスイスラエルの場合:
看護師、ソーシャルワーカー、アドボカシーの専門の勉強をした者(専門の修士学位あり)で構成している。また、医療知識のバックグラウンドについては全てのメンバーに必ずしも最初の時点では必要なく、仕事を通じて習得できるとの事。


○患者の側に立ちきれるか?病院の都合にとらわれず・・・

ローラさん自身は過去に患者の側に立ちきれなかったことはないとの事。以下ローラさんの話。

例えば医療過誤があった場合にそれを隠そうとしても、それはいずれ暴かれるであろうし、当然のことながら患者の権利として守らなければならないという規則にもなっている。むしろ常に真摯に対応することで訴訟のリスクはぐっと下がる。医療過誤も大半はシステムの問題であり、再発を防ぐためのアイディアをしっかり示せば、例え自分が今回の被害者であっても未来につながるのであればそれを受け入れてくれる場合が多い。

昨日(インタビューの前日)も医師と患者の娘(患者はコミュニケーションを取れる状態ではないため)とのコミュニケーションに問題があり、娘は非常に怒り、かたくなになっているという事があった。早速、娘さんと担当の医師、看護師そして相談室から私とソーシャルワーカーと関係者全てを集めて医療の進め方やその決定が適切であったがどうかの面談を行った。するとその場で担当の医師は非常に攻撃的な言葉で大声をあげて話し、他のスタッフの意見を全て否定した。その結果を踏まえて、私は担当の医師の変更を医療部長に申し出て、それを実現した。また、再発防止に向けたシステムの見直しも私の業務であり、それら全てが病院から期待されていることである。

なお、患者代理部は副院長直属であり上記のような人事についての提言も可能であるとの事。


○相談の種類

一番多いのは病院スタッフの態度に関するもの。傲慢である、プロとしての振る舞いでないとの指摘がある。次に医療行為、進め方に関して間違っているのではないかという疑問。その他、早く退院しろと勧められた、病院施設に関するものとして汚いなどがある。

年間2000件をスタッフ8人で対応している。なお、入院患者と救急のみで外来はなし(外来は分離されており別病院)。

上記に加え、英語が話せない人向けに年間500件程度の翻訳の対応も行っている。

これらの相談事項は患者の権利として州より保障されており、その対応が病院に義務付けられている。具体的な内容はガイドブック(写真参照)として州から提供され、全ての病院で無料で配布されている。内容として 目を引くのが”患者は自ら疑問を話さなければならない”と患者自身にも積極的な参加を義務付けていること、病院都合の早期退院を防ぐ手段として退院後も引き続き健康を保てる退院後計画を病院は患者に説明しなければならないこと、自分はどのような医療を受けたいかを前もって申請できること(Living will)などが挙げられる。


○患者相談室(Patient Advocacy)の今後へのチャレンジ

最後にローラさんの今後のチャレンジを紹介する。

社会全体としては国民皆保険の実現を目指したいとの事。(今回のUS視察でたくさんの医療者に会ったがみな口を揃えてこのことを問題にしていた。先進国で皆保険がないのは稀有である。)日本でも医療政策への提言をだれが行う(従来どおりの医療を提供する側の医療者だけでなく)かというのが議論になっているが、ローラさんのように現場を知り、専門知識を持ち、常に利用者である患者の側に立っている方が担うのはベストな選択の一つであると思う。

病院内としては患者の自己決定支援をしたい。アメリカでは医師が治療のオプションを示すことはあっても、どれかを薦めることはめったにしないそうだ。”先生、あなただったらどうします?”という質問をしても答えてくれない。背景には何かあったときに訴えられることを危惧していることがある。しかしながら全ての患者がオプションを示されて自分で選択できるわけではない。自分にはどれが合うかどうか、自身の生活の背景などを整理し、考慮し、難しい医療行為を決めることは決して易しいことではない。この部分をサポートしたいとの事。

なお、日本ではこの患者の自己決定支援について医療コーディネーターが既に実践している。先進事例として紹介しておく。

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