放射線治療装置の差で生存率最大3倍の差 (岩本ゆり)

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放射線治療:子宮頚がんや食道がんで生存率最大3倍の差

http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20040421k0000m040173000c.html

子宮頚がんや食道がんの放射線治療を受けた患者の生存率に、病院が適切な治療装置を使ったかどうかで最大3倍の差が出ることが、厚生労働省研究班(班長・手島昭樹大阪大教授)の調査で分かった。以前から不適切だとされている装置で治療を続けている病院が多いことも明らかになった。

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日本におけるCTやMRIの問題点として、保有台数は多いが、古い機械をいつまでも使っているケースが多く、どの機械をで検査をしたかによって診断に差が出てしまうといった問題点は以前から指摘されていましたが、またしても。。。といった感がありますね。

ではどうしたらこような自体が避けられるのか。といったことについても教授は触れており、病院や行政への取り組みの改善と、患者の自助努力を進めています。しかし、問題はそんなことで解決できるものではないと思います。

今の日本の現状で高い(一台2億から3億!)機械をしょっちゅう買い換える事は出来ない、という本音もあるでしょう。でもだからと言って患者が、「この機械は○○ボルト以上出るのでしょうか?」と聞きなさいと言うのもお門違いです。正すべきは、この患者にこの機械で治療することが適していないと判断できる医師がそれを患者に伝えない現状ではないでしょうか。非常勤の医師だから言えないとか、院長だから言えない、とかではないはずです。医師の良心はどこへ行ってしまったのでしょう?
縦割り社会の弊害、医師や病院の患者の抱え込みがここでも見え隠れしています。患者さん達の「医師は自分を実験のサンプルだと思っている」という訴えは、まさにこんな態度から感じるのでしょう。


【記事全文】

子宮頚がんや食道がんの放射線治療を受けた患者の生存率に、病院が適切な治療装置を使ったかどうかで最大3倍の差が出ることが、厚生労働省研究班(班長・手島昭樹大阪大教授)の調査で分かった。以前から不適切だとされている装置で治療を続けている病院が多いことも明らかになった。

 研究班は、全国で放射線治療をしている約700の病院から75カ所を抽出。95?97年に治療を受けた各種のがん患者について調べた。

 子宮頚がんでは、放射線を出す金属を子宮内に挿入してがんをたたく「腔内(くうない)照射」の装置を使ったかどうかで、生存率に大差があった。進行がんの「3期」の場合、同装置を使わない患者の5年生存率は23%だったが、同装置で治療を受けた患者は64%。より進んだ「4期」でも13%と38%の差が出た。受けなかった患者の一部は症状が重かった可能性もあるが、それを考慮しても照射の有無が大きく影響したとみられる。

 日本放射線腫瘍(しゅよう)学会の別の調査によると、全国で放射線治療をする病院のうち、腔内照射をする病院は約2割。しない病院は、照射が必要な患者を設備のある病院に紹介するのが原則だが、紹介しない病院も目立つという。

 また研究班が食道がんの手術を受けずに放射線治療を受けた556人を調べたところ、放射線のエネルギーの違いが生存率に影響していた。

 複数の医学専門書によると、体の奥にできる食道がんの治療には、がん細胞に放射線を届かせるため6メガボルト以上の高いエネルギーの放射線を使う必要がある。ところが、調査対象の75病院のうち20病院には高いエネルギーの装置がなかった。病院の規模などから全国では患者の2割強が低いエネルギーで治療されていると推計された。

 3年生存率を調べると、がんがあまり進んでいない「1期」と「2期」の場合、低いエネルギーで治療を受けた患者は35%だったが、高いエネルギーだと44%。より進んだ「3期」では5%と18%だった。

 手島教授は「患者は病院に、腔内照射を受けられるか、放射線のエネルギーが6メガボルト以上かを確認した方がよい。行政や病院は、適切な装置を備える努力をしてほしい」と話している。

 【高木昭午、鯨岡秀紀】

 ◇悪い装置しか使えず、「患者に申し訳ない」

 「患者に申し訳なく、つらかった」。厚生労働省研究班の調査で、適切な装置の有無で生存率に大きな差が出ることが分かった、がんの放射線治療。国立病院の医師(40)が、副作用を防ぐために効果の薄い治療を続けるしかなかった現場の実情を明らかにした。一方、装置を替えて治療の改善を図る病院もある。

 医師は97年から99年まで週1回、西日本の国立病院で働いた。治療装置は「コバルト」と呼ばれるタイプで、放射線のエネルギーが低く、食道がんや肺がんの一部には不適当だった。

 非常勤の身で、直接患者に「装置がよくないので他の病院へ行った方が良い」とは言えなかった。主治医に事情を話し、良い装置のある大学病院に患者を送るようにした。それでも、主治医の了解が得られない場合や、体力がなく移送しにくい患者は、仕方なくそのまま治療を続けた。

 コバルトのような低いエネルギーの装置は、副作用で皮膚炎が起きやすい。背中の皮が日焼けしたように赤くなり、ひどくなるとズルリとむける。副作用を防ごうと、あえて、がんに当てる放射線を減らしたこともある。医師は「治療効果が落ちるのは覚悟の上でした。つらかった」と振り返る。

 98年、治療に適した装置を買ってほしいと院長に頼んで認められた。1台3億円。予算がなかなかつかず、購入は02年までずれこんだ。

 一方、厚労省研究班の調査結果を生かして改善が進んだ病院もある。大阪府吹田市の吹田市民病院。研究班長の手島昭樹・大阪大教授が非常勤医師として働いていた。手島教授は研究班の調査結果や、放射線治療を受ける患者が増えている現状を病院に説明した。病院は02年、20年間使っていた古い治療装置を約2億4000万円の新装置に替えた。

 新装置は食道がんなど体の深い部分にあるがんに放射線が届くうえ、以前より狙いを絞って放射線を当てやすくなった。

 手島教授は「装置を替えて副作用ははっきり減った。その分、治療もしやすくなった」と治療効果に期待している。【高木昭午、鯨岡秀紀】

毎日新聞 2004年4月21日 3時00分

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