北澤京子さん
医学雑誌記者
私は仕事がら、医師をはじめとする医療従事者の方にお話をうかがう機会が多いのですが、医療従事者には当たり前のことでも、そうでない人にはちっとも当たり前ではないことが多々あることを痛感します。医学用語ひとつとっても、難解であったり、略語のため意味が分からなかったりすることがめずらしくありません。医師が患者に対して「MRI(エムアールアイ、検査の一種)やって」と言ったところ、患者が「丸裸になって」と聞き違えて服を脱ぎそうになった(!)という、笑い話のようなことも聞いたことがあります。
インフォームド・コンセントの考え方が普及し、病気の進行度合いや治療について、患者が医療従事者から説明を受ける機会が増えてきました。しかし、患者がほんとうに説明された内容を理解し、納得できているかというと、必ずしもそうとばかりは言えないようです。つまり、情報・知識という点に限っても、医療従事者と患者の間には、少なからずギャップがあるのが現実です。
医療従事者との間に立って、よりよい医療を受けられるよう手助けしてくれる人がほしい――そんな患者の願いから、医療コーディネーターという職種が生まれてきたと理解しています。専門分化が進む医療現場では、医療コーディネーターの必要性は、今後、ますます高くなるでしょう。難しい言葉をやさしく言い換えるだけではなく、患者の思いを受け止め、患者が納得して医療が受けられるよう、活躍していただきたいと思います。

3月3日に
Independent Nurse 自立した看護師のためのSNS
がオープンしました。(運営:楽患ナース株式会社)
このSNSは、自立した看護師になるための学び場です。コーチングやファシリテーターをしている方、研究と臨床の橋渡しをしたい方、訪問看護師や退院支援看護師など、多種多様な働き方をしている方々が集まっています。
以下、SNSの紹介文です。参加を希望される方は招待制となっておりますので、info@rakkan.net までご連絡下さい。※参加には看護師であることが条件になります。
-----------(以下お知らせです。転送歓迎致します)
Independent Nurse 自立した看護師のためのSNS
http://www.inurse.jp/
看護師とは、療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者です。しかし、現実的なサービスとしての看護機能は広がり続けており、『看護の自立』なくして充足はありません。それは私たち看護師各自の意識と行動にかかっています。今こそ一人ひとりが看護のプロフェッショナルとして自立するために、看護師同士が学び、分かち合い、そして時に癒し癒される場が必要です。このSNSはそうした自立した看護師となるための場として存在しています。

闘病記を探す方法はここ数年で飛躍的に増えました。新しいところでは、2006年に「闘病記」を専門に収蔵したインターネット上の図書館闘病記ライブラリーが出来ました。
闘病記ライブラリー このサイトについて より引用
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闘病記は、病を経験した患者や患者の家族、患者を支える人によって書きつづられた記録であり、通常の医療情報からは得がたい貴重な情報源となります。けれども、本の題名に病名が入っていない場合、何の疾患について書かれた本であるのかが判断つきにくい為、簡単に探すことができないという問題があります。そこで、闘病記ライブラリーは、「がん」「脳の病気」といった12の分類にわけ、病名から本を見つけることができるようにしています。
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他にも闘病記を探す方法として一番歴史があるのはパラメディカです。こちらが開店したのは1998年。店主である星野さんは、闘病記を探そうとしても「タイトルから病名が分かりづらい」「自費出版が多い」「売れ筋にはならないのですぐに店頭に並ばなくなる」という独特の事情があることから、古本屋を一軒一軒毎日回り、探しては病名を付け、リストを作るところから始めたそうです。8年間で患者情報はこれだけ手に入りやすくなりました。ネットの力と、何よりも患者情報が大切だという意識の変化がKEYになったのだと思います。これからの進化が楽しみです。

2月18日オープンしたばかりの「TOBYOアルファ版」のご紹介です。このサイトは闘病者の体験情報を共有するツールです。まだテスト段階だということですが、興味深いサイトです。
TOBYOには、図書室・レファレンス・Myデスクの3つの機能があります。ひとつひとつ、痒い所に手が届く情報提供になっています。あとは、どれだけの患者・家族に魅力的だと思ってもらう仕掛け(例えばロールモデルの存在など)を持たせるか、そして認知を広めるか、ではないでしょうか。今後の発展がとても楽しみです。
DIPEx JAPANの活動しかり、今年は患者からの発信に注目が集まりそうです。

抗がん剤・放射線治療と食事のくふう-症状で選ぶ! がん患者さんと家族のための (がんよろず相談Q&Aシリーズ) のご紹介です。
この本は、静岡県立静岡がんセンター と日本大学短期大学部食物栄養学科が編集に当たっています。
もともとは、静岡県立静岡がんセンターが中心となって2003年度に実施された『がん体験者の悩みや負担に関する全国調査』の結果約一万件がもとになっています。結果は、Web版がんよろず相談Q&Aサイトとしてホームページ上でも閲覧できたのですが、この度日本大学短期大学部食物栄養学科の協力を経て、書籍化及びSURVIORSHIP.jp 「がんと向きあって」というホームページへと生まれ変わりました。
この本は、これまでありそうでなかった本です。治療中の食事というと看護師が主たる情報提供者になりますので、私もこれまで患者さんがすぐ手にとって使いやすい本をこれまで探してきました。しかし、「食べ方」・・・例えば、少量づつ食べる、冷やして食べる、などについて言及しているものは教科書に始まり多数ありましたが、具体的に患者さんの置かれている状況、例えば嗅覚の変化、胃の不快感、などに沿って紹介している冊子は見当たりませんでした。おまけに自分で作れるレシピや美味しそうな写真付きです。治療中、食事のことを思い出すのも嫌!という患者さんも多いですが、少しでも食に対するイメージを改善する役目を果たしてくれるのではないかと期待しています。

「がんの在宅ホスピスケアガイド―ただいまおかえりなさい」 のご紹介です。
パンフレット「あなたの家にかえろう」作成時にでご一緒しました吉田利康さんの著書です。表紙と挿絵はパンフレットの絵も担当して下っています吉田恵子さんが描かれています。優しくて、温かくて、私は大好きです。
この本は、病を持って家に帰ることはどういうことか、何がハードルとなり、何が素晴らしいのか、という現実を垣間見ることが出来ます。元気な時だからこそ冷静にいつか来る日のことに思いを巡らしながら読んで欲しい一冊です。
吉田さんは「鉄郎」というハンドルネームでご存じの方も多いと思います。HP「白血病の妻と共に痔主は行く」はこちら

「ちょっとだけ凹んでいるあなたへ―希望の言葉を贈りあおう」 のご紹介です。
この本は、「ふっと気持ちが軽くなる。心がラクになる。希望の言葉の贈りもの。」です。
岸本葉子さん、HOPE★プロジェクトの桜井なおみさん、生長恵理さん達が編者です。実はこの3人の方には一つの共通項があります。皆さんジャパンウェルネスの会員でサポートグループに参加していた仲間でした。ということは、3人ともがん患者さんです。しかしこの本はがん患者さんだけを対象にはしておりません。医療者である私もちょうど同時期にサポートグループのファシリテーターをしていた御縁や、楽患ねっとでの関わりなどがあり、この本の出版記者会見に参加させて頂きました。
記者会見で岸本さんが書籍の作成秘話を語っておりましたが、その中でも非常に心に残った言葉があります。それは、「この本をがん患者さんだけを対象にした本にしたくなかった。希望を必要としているのはどんな病の方でも同じだから」という主旨の発言でした。
誰もが読むと心がほっと暖かくなる書籍です。
林伸宇さん
医師 東京大学医学部附属病院 千葉大学医学部卒業
世界一の長寿を誇りながら先進国中で最も安いレベルの医療費を実現している日本の医療は世界の中でもかなり高い水準にあると言えるでしょう。しかし、現代の医療技術や医療資源、医療制度下で行える医療には限界が存在するのもまた事実です。このような制約の下、我々医療者が直面している現実と、「何の制約もない最高の医療」を求める患者さんの希望との間には大きなギャップがあり、この橋渡しをする人材がこれまで不足していました。
この大きなギャップは、時に患者さんと医療者との信頼関係によくない影響を与えることがあります。臨床の現場では、患者さんやその家族との関係が良好でないと、医学的に正しいことでも納得していただけないときがあります。このような状態は、「納得できない」という気持ちを患者さんが抱きつづける点でも、萎縮医療をも招きかねない点でも、患者さん、医療者の双方にとって大変不幸です。
このような現実を打開するためにも、医療コーディネーターという選択肢があるのは大変素晴らしいことです。無過失保証制度や裁判外紛争処理(ADR)といったシステム面での整備とともに、よりよい医療の実現に必要なことだと考えます。
患者さんが「納得」できる医療を受けるためにも、医療者がやりがいをもってベストの医療を提供していくためにも、医療コーディネーターが果たすべき役割は間違いなく大きなものです。経験に裏打ちされた現場感覚と適切な医療情報を持って、患者さんに真摯に寄り添っていく医療コーディネーターの皆様を心から応援いたします。
第7回 NON定例会
2007-2008 年間テーマ 「医療における意志決定支援」 第2回
「がん患者体験を通して考えた意思決定の実際とヘルス・コミュニケーションについて」
ナビゲーター:岡部大祐さん(2005年縦隔腫瘍と診断を受け、抗がん剤治療終了。言語学、ヘルス・コミュニケーションについて大学院にて研究中)
▼原町高齢者在宅サービスセンター2階会議室にて
▼平成19年11月10日(土) 13:30-16:30
▼タイムスケジュール
・13:00- 開場
・13:30-14:30 レクチャー 60分
・14:30-14:45 質疑応答 15分
・14:45-15:00 休憩 15分
・15:00-16:00 ディスカッション 60分
・16:00-16:30 名刺交換 30分
▼今回のお題
「医療における意思決定についての意見・考え」
▼演者:岡部大介
司会:岩本ゆり
NON参加者:15名
「がん患者体験を通して考えた意志決定の実際とヘルス・コミュニケーションについて
~がん、人、医療、社会、といろいろ考えてみたこと~」 についてレクチャー
1.「がん患者」とは誰なのか。
患者である前に「私」という人間であること。
人間とは多元的で動的な存在であると言うこと。
→ Who am I テストを通して、参加者全員で考える。
2.意志決定の経験とそこで感じたこと
(1)生物医学モデルと心理社会的モデルの違い
→ 医療者は正常な状態から外れた人を病人(患者)として医療の対象にし、その人達を正常な状態に戻すことを科学的に実証することで「医学」と言っているように感じる。それに対して、病気になった自分は「どう生きるか」ということに論点を置いているので、医療者とは話がかみ合わないと感じた。
(2)常に「前向き」であることを求められて辛いと感じた。
日々は輝いて見えるけど将来は灰色、という気持ち。
3.縁側の創出
医療は他職種協働コミュニケーションの場である。その中に「縁側」のように、気楽に立ち寄って、目的もなく話ができるような場所が存在したら、コミュケーションが成立しやすくなるのではないかと考える。